血管外科|内田クリニック|平塚市 内科 消化器内科 血管外科 在宅診療

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血管外科

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血管外科

血管外科

血管外科という診療科は一般の患者さんにはなじみが薄いかもしれません。しかし対象疾患は人体の中の脈管すなわち動脈、静脈、リンパ管に生じる多岐にわたる疾患を扱っています。例えば動脈硬化という言葉は皆様もよく聞いたことがあると思います。動脈硬化とは専門的にはアテローム硬化という動脈内膜に生じる進行性の疾患で、血管局所の内皮細胞の傷害から始まり、最終的に動脈の狭窄や閉塞をきたして臓器障害に進行する病気です。危険因子としては年齢、性別、脂質異常症、糖尿病、高血圧、喫煙、運動不足などがあげられます。特に肥満に加えて、高血圧、脂質異常症、糖尿病は、いわゆるメタボリック症候群を構成する疾患群に挙げられており、特定健診などで認知度も高いと思います。これらのメタボリック症候群の終末像が心臓、脳血管疾患、末梢血管疾患、一部の腎疾患などです。近年は特に糖尿病由来による血管障害の疾患が著しく増加しています。血管外科はこれらの中でも特に末梢血管疾患の診断、治療を行っています。ほかにも静脈疾患や一部リンパ疾患についても診断、治療を行っております。次に血管外科で扱う頻度の高い病気について説明いたします。

動脈疾患

腹部大動脈瘤

心臓から出た血管はまず胸部大動脈という血管から、脳血管や左右の上肢に向かう血管を分岐した後に横隔膜を通り腹部大動脈となります。腹部大動脈は肝臓、腎臓、腸管などの様々な重要な内臓臓器に血管を分岐しています。腹部大動脈瘤はこの大血管が正常の1.5倍以上限局性に拡張した病気です。原因は90%以上が動脈硬化性によるといわれています。動脈瘤径が通常5㎝を越えると破裂の危険性が高くなるといわれており、破裂した場合の救命率は非常に低いことから、破裂前の適切な時期に手術治療を行うことが重要です。動脈瘤は腹部の拍動性のしこりを自覚されて医療機関を受診する場合や、動脈瘤からの血栓が下肢の動脈などに閉塞して発見されることもありますが、大部分は無症状です。医師の腹部診察によって、あるいは他の疾患の精査で画像診断を行ったときに偶発的に発見されることがほとんどです。当院では腹部診察で疾患が疑われた場合は腹部超音波検査などで検査を行い平塚市民病院、平塚共済病院、東海大学医学部付属病院などに紹介しております。治療法は開腹による従来からの動脈瘤切除人工血管置換術が基本ですが、近年低侵襲の治療法としてステントグラフト内挿術の手術法も飛躍的に増加しています。病気の内容や治療法についてわからない点はお気軽にご相談ください。

閉塞性動脈硬化症

腹部大動脈は人体の臍のあたりで両下肢に向かう腸骨動脈に分岐してその後は大腿動脈、下腿動脈に分岐していきます。この下肢動脈が動脈硬化性に狭窄、閉塞してくると歩行時に足の痛みが出現し、進行するとじっとしていても足が痛くなり、最終的には足に潰瘍や壊死が起こり歩行不能となるばかりか、感染を併発すると敗血症から死に至ることがあります。またほかの合併する心臓大血管や脳血管疾患で死亡する危険性もあります。症状はFontaine分類が有名です。I度は無症状、II度は間歇性跛行、III度は安静時疼痛、IV度は潰瘍、壊死と症状に応じて4段階に分類されます。間歇性跛行という症状ですが、これは「ある距離を歩くと痛みのため歩けなくなり、しばらく休むとまた歩くことができる」という症状です。病状の進行に伴いこの歩行距離が徐々に短くなってきます。痛みの部位は閉塞している場所により異なりますが、腸骨動脈では臀部の痛み、大腿動脈では太ももからふくらはぎの痛みです。この病気の存在にはABPI(足関節、上肢収縮期血圧比)やPWV(脈波検査)が簡便で有用な検査法です。当院で検査可能ですのでお気軽にご相談ください。間欠性跛行は腰部脊柱管狭窄症でも同様な症状がありますので鑑別にも有用です。またIII度、IV度と症状を認める場合は血管超音波検査(下肢動脈エコー検査)で診断することも可能です。治療についても症状に応じて運動療法や薬物療法を当院では行っております。進行症例では血管内カテーテル治療や、血行再建手術が必要となりますので平塚市民病院、平塚共済病院、東海大学医学部付属病院などに紹介しております。

静脈疾患

下肢静脈瘤

下肢の静脈は体表面にある表在静脈と深いところにある深部静脈があり、これらの二つの静脈は穿通枝によって交通しています。静脈には弁があり、通常血液は表在から深部に向かって一方通行に流れますが、何らかの原因で表在静脈や穿通枝の弁が破壊されると、深部から表在静脈へ血液の逆流が生じて表在静脈が怒張、血液がうっ滞することで様々な症状を引き起こします。ほかにも後述する深部静脈血栓症の慢性期でも静脈瘤は生じますが、これは二次性として区別されます。患者さんが相談に訪れる静脈瘤の大部分は一次性下肢静脈瘤です。静脈瘤の原因は不明ですが発症には長時間の立ち仕事や女性では妊娠や女性ホルモン、ほかに加齢、感染、外傷などが危険因子に挙げられます。症状は皮膚の外見が気になり来院される無症状の軽症のものから、むくみ(浮腫)、足の重量感、だるさ、そして色素沈着や皮膚炎、潰瘍など重症なものまで様々です。特に静脈瘤特有の症状として、就寝中のふくらはぎや前脛部の筋肉のけいれん(こむらがえり)と、血栓性静脈炎という怒張血管に血栓が生じて起こる疼痛と熱感があります。当院では血管超音波を用いて血栓性静脈炎などの診断を行ったり、弾性包帯や弾性ストッキングを用いた適切な圧迫療法の指導や、手術適応の場合は適切な静脈瘤治療施設への紹介を行っています。静脈瘤は軽症例では静脈瘤硬化療法、伏在静脈瘤では高位結紮、ストリッピング術になりますが、最近はストリッピングの代わりにレーザー焼灼術もしくはマイクロ波焼灼術を行う施設も増えており、患者様の要望に合わせてこれらを治療可能な施設に紹介いたしますのでお気軽にご相談ください。

深部静脈血栓症、肺動脈血栓塞栓症

深部静脈血栓症とは深部静脈に血管壁の傷害、血流のうっ滞、血液凝固能の亢進が生じることで血栓が起こる病気です。血栓形成の危険因子としては旅行中の長時間座位や、妊娠による下大静脈の圧迫、下肢の骨折時のギプス固定による下腿のポンプ作用の低下などが有名です。東日本大震災時に車中泊を繰り返した方に発症した方が多かったことは記憶に新しいと思います。いわゆるエコノミークラス症候群という病名で有名です。ほかにも凝固系の亢進する病態としては、手術、悪性腫瘍、経口避妊薬などの薬物、感染、脱水などや、先天性、後天性凝固異常などがあります。血栓の好発部位はふくらはぎのあたりで、疼痛、腫脹が生じ、血栓がさらに増加、進展すると下肢全体が緊満腫脹してきます。この病気の恐ろしいところは、血栓が静脈血流に乗って肺に運ばれて肺動脈を閉塞することにより急性の呼吸循環障害を発症する場合があることです。肺動脈塞栓症の症状は突然の呼吸困難、胸痛、頻呼吸、頻脈などです。失神や心停止を来たすこともあります。当院では深部静脈血栓症の段階で血液検査所見や膝窩静脈から大腿静脈の血管超音波検査などから疾患が疑われた場合は可及的速やかに造影CT検査ができる提携病院に紹介しております。また慢性期の静脈血栓症の患者さんの抗凝固療法を行いながらの経過観察など、病院からの逆紹介にも対応いたしております。

このほかの血管疾患についても北里大学病院で脈管専門医として診療に当たってきた経験を踏まえ、患者さんの要望にできる限りお応えしていきたいと思っておりますのでどうかお気軽にご相談下さい。